笛吹市自立支援協議会で、相談支援部会の部会長の鈴木勝利です。
相談支援部会は、市内の障がい児者の相談業務に関わる様々な職種の方々が集まり、事例検討や虐待・差別研修会などを通じて、スキルアップを狙う事を行っています。
今回は当事者が参加してのアセスメント・計画作成演習を8月27日午前9時30分から11時30分、笛吹市役所で開催しました。
これは、障がい当事者が参加し、部会に参加する相談員の皆さんが聞き取り等のアセスメントを行い、これからの人生計画を作成し提示するというものです。
今回の参加者は、萩原啓二さん。市内のグループホームに入居し、日中は就労支援施設にて就労訓練を受けています。
まずは自己紹介から始まり、4人から5人のグループに別れた参加者から色々な質問を受ける中で、「萩原啓二さんってどんな人」という人物像を探ります。この日は3つのグループでした。
皆の前で自己紹介をすると言う機会があまり無かった萩原さん。緊張しながら自分の生い立ちや、現在のグループホームの生活などを語ります。聞き取り時間はわずか20分。ひとつの事を聞きながら、色々な事を想像して関連付けをして、再度質問を返していく。アセスメント力が問われます。
一通りの質問の後は、聞き取った情報や、事前に配布された情報などを模造紙に記載しつつ、グループにて「萩原さん」像を作っていきます。


出来た模造紙を発表し、萩原さんに見てもらいます。その中で、一番自分に近いと思われる像を選んでいただきました。
萩原さんは、「本を読むのが好き」と言いました。でも、日々の中で行っている事は、「誰かに読み聞かせ」をしたいということのようです。そこに着目したグループのアセスメント表が選ばれました。「2001年宇宙の旅」は、是非読んで欲しい本だね、と萩原さんは語ります。


次は計画作りです。
萩原さんは既に障害福祉サービスを受けているので、そのためのサービス利用計画は出来ています。しかし、今回はそれに拘らず、広い意味での人生計画を立てていきます。
グループホームでの生活を基にした設計、或いは萩原さんの趣味や、やってみたいけれどなかなか出来ないと思っていること等、グループで大事と思った事を計画に落としていきます。

出来上がった計画書を、グループの説明を付けて萩原さんに見ていただき、こちらもひとつを選んでいただきました。

こちらのグループは、「美味しい物を食べに行こう」計画です。お金にシビアな萩原さん。就労支援施設での工賃を、たまには美味しい物を食べる事に使ってみよう、そのためには貯金をして、どのような支援が必要なのかを提案しています。
あちらのグループは、現在のグループホームでの生活を主にした計画です。一人で行動する事が多い萩原さんですが、実は多くの仲間や支援者が色々なところに居ることを説明。また好きなアイドルのファンイベントに参加するためには、どのような支援があるかなどを提案しました。その中で、自分が居やすい場を自分で作る事をしましょうと提案しました。
またこちらのグループでは、より自立した生活が出来ることを主にした計画です。グループホームの生活は満足はしていますが、その先の生活に漠然とした不安があることを主に、独り暮らしだって可能になるかもしれない計画を立てています。
どれかひとつを選ぶを選べないよ、という萩原さん。独り暮らしはしてみたいけれど無理だし、お金が掛かることはもったいないなあ、でも、どれもじっくり考えた事が無い事を提案してくれているね。と悩んでいます。
結局、「これなら出来そうだ。」と言う事で、現在のグループホームの生活をより充実させていく計画を選びました。
萩原さんは、小さい頃の病気から障がいが始まっています。その人生の中で、色々な制約や壁が出来てしまっているために、「出来ない、やれない」という思い込みが強いのかもしれません。そのためか、「まあ、あれもこれも考えながらするって、なかなか難しいんだよね。やってみたいとは思うんだけれどね。」と言います。
また、現在支援してくれる家族が居なくなった場合が質問にあり、そこから、社協の日常生活自立支援制度に強い興味を示していました。
最後に感想として、「こんなに自分の事を聞いてくれて嬉しいし、色々と考えてくれて感謝します。今までこう言う事無かったので、どうしたらいいか分からないけど、何とかやっていきたい。自分の知らなかった制度もあるんだね。」と言いました。
今日皆さんで作った計画は、そのまま萩原さんが使うと言う訳ではありません。でも、こうやって一歩踏み出して、自己開示をする事で、色々な専門的支援を考えてくれるところがあるのだということは、萩原さんにとって心強い応援団になったのではないかと思います。
この演習は、日本社会福祉士会が開催している「障がい者の地域生活支援研修」を元に行っています。日本社会福祉士会では、2日間を掛けて演習を行いますが、相談支援部会ではその内容を2時間に圧縮して独自の方法で開催しています。
萩原さんのように、この演習に参加していただける当事者を募集しています。
問い合わせは、笛吹市基幹相談支援センター 055-262-1274
支援センターふえふき 055-263-1777
笛吹市自立支援協議会 相談支援部会 (認定社会福祉士 鈴木勝利)