相談支援部会では、年に1回、障がい当事者を迎えてのアセスメント演習を行っています。この演習には、峡東3市の中で相談支援を行っている相談員や、障がいの事業所に勤務する職員、行政担当者などが参加しています。




参加して頂いた障がい当事者に、参加者が色々と聞き取りをしながら、当事者が今後、地域で生きていく目標や夢などを聞きだし、具体的な形になるような提案をしていくものです。
我々相談員は、ついサービスをどのように使っていくか、と言うところを主にしてしまいますが、実際に生活する当事者は、サービスだけを考えて生きている訳ではありません。大事なのは、どのように自立した地域生活をしていくか、というところなのです。仕事や仲間との時間、趣味や生きがい、買い物やおしゃれなど、様々な活動をしながら自分の生活を組み立てていきます。しかし、障がいのために思うように生きられないことも沢山あるのです。
さて、今回参加してくれた当事者さんは、どのようなことを語っていただけるのでしょうか。

12月22日火曜日、午前9時30分。笛吹市役所で演習を開催しました。
今回参加していただいた当事者は、石和町在住の22歳の女性のAさんです。脳出血からの障がいがあり、手足にも麻痺があります。現在は他市の市役所に勤務し、毎日徒歩と電車通勤をしているOLさんです。支援センターとの関わりは特別支援学校から。卒業後は就労訓練を経て、一般就労に繋がりました。
Aさんに演習への参加依頼をお願いした時、とても喜んで引き受けていただけました。自分の事を話す機会があまり無いので、皆さんに聞いてもらえるのはとてもうれしいですと言いました。
Aさんは自立をしていますので、サービスは使っていません。一見、全ての事が自分でできるAさんのように見えますが、実は小さな困りごとは沢山あります。この演習で、そのうちの一つでも無くすことが出来るでしょうか。

参加者は2つのグループに分かれ、まずはAさんへの質問タイムです。仕事の事、生活上の困りごと、通勤途中の出来事、仲間の事など。麻痺のため、補装具を装着すれば徒歩での通勤も出来るのですが、不安定さはどうしてもあり、周りの環境に影響されてしまいます。また、手にも麻痺があるため、手先を使う仕事や物を運ぶ仕事にも制限があると言います。最初はとても辛かったが、周りの助けや、自分なりに工夫をしてきたと言います。
様々な苦労はあったけれど、それでも仕事が出来る事は自分の自信でもあり、生きがいと語ります。

このような質問を重ね、まずそれぞれのグループにて「Aさんてどんな人」を模造紙に書き出します。そしてAさんに見てもらう作業です。22歳の女性ですから、色々なおしゃれをして楽しんでいますね。
次に、将来どのようなことをしたいか、ということを聞きながら、Aさんが出来る事、苦手なことを整理し、参加者が「Aさんに出来そうなこと」を提示します。
人は知らずの内に、自分の出来る事だけで生活を狭めています。改めて人に話す事で自分の知らない事や、他人から見える自分を再発見することがあります。
Aさんも、夢として独り暮らしをしたいと言います。しかし、家事を行うことには壁があり、自信が無いと言います。参加者は両手を使わない料理方法を提示したり、身体能力を向上させるためのコツなどをアドバイスしました。
Aさんなりに色々な工夫をしていますが、参加者が提示するアイデアを熱心に聞いていました。

最後に、各グループで仕上がった「Aさんの夢や生活」を、Aさん自身に見ていただき、Aさんがぜひやってみたいことを拾い上げていきます。
コロナ禍で、演習の時間を90分と設定したため、Aさんはまだまだ語りたかったようですが、それでも皆に話を聞いてもらうことが兎に角うれしいと言いました。
ただ・・部会としては、「地域で暮らす」ための力として、助けてくれる地域の人や機関、実際の一人暮らしのイメージを持ってもらうための工夫や、想定されるリスクの話などが出来れば良かったと反省しています。また、自立生活のためには「自分で決める」ための力をどのように付けていくか等々・・あと30分あればもう少し課題を広げられたかな、と言うところで終了の時間となりました。
話好きなAさん、またいつか参加してください。Aさんが将来どのように生活していくのか、どのような夢をもって生き生きと過ごしていくのか、私たちはとても興味があります。また話をしてください。
恋をして、いつかは結婚をしてと、夢をどんどん膨らませていくAさんを、皆で応援します。
※当演習は、峡東3市で実施する障害者地域拠点支援事業のひとつであり、笛吹市は研修や育成を担当しています。
相談支援部会 部会長 鈴木